【読書1/5・第12回】△真保裕一「ホワイトアウト」▼有川浩「図書館戦争」
延滞により図書館に追っかけまわされています。
それもこれも井上靖「額田女王」を読むのがものすごい時間かかるからなんだよなあ!
・浅田次郎「メトロに乗って」
メトロの駅から昭和の色々な時期にタイムスリップする話。題材の趣味が素晴らしく、描写も完璧で、とにかく美しいしアドベンチャラス。しかしどうしても私が受け入れがたいのは、不倫を「恋愛の1つ」として扱い、不倫相手を素敵な恋人のように扱っているところだ。それさえなければ買うのに、それがあるおかげで胸糞。
暗い田舎で暗い生活を送る不運で暗い姉弟愛の話。暗すぎる。新聞で連載していたらしいけど、朝っぱらからこんな救いようのない話を読むのはどうなんだと思った。よくまとまっていると思うけど暗すぎた。
「未成年に対する淫行、裁判、セカンドレイプ」というワードに嫌な思い出がある人は読まないほうがいい。狂気が濃い。小説家ってサイコパスなのかもしれない。
これめっちゃ面白かった!!!
あらすじを説明するより、「ダイ・ハード雪山編」という言葉で全てが伝わると思う。能力が高過ぎる一般人が大活躍する話。アクション映画を観ているようだった。
皆さんダイ・ハードを観る時に人生の機微や教訓や哀愁を感じたいと思って観ますか?観ないでしょ?この本もそんなものいらんのです!もっとガーッとやってガッとしてグッとしてドカーンっていう感じで読めばいい!豪快な本です!
豪快な本に描写力が相まって最高のエンターテイメントでした。ごちそうさま!!
- 作者: 有川浩,徒花スクモ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/04/23
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 850回
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あぁ〜〜↑↓↑↓これねぇ〜〜〜〜↑↓↑↓
これ友達から貸してもらった本なのにWORSTに入れるの非常に偲びねぇ〜〜〜↑↓↑↓
でも私には合わなかったんだよなぁ〜〜〜〜↑↓↑↓
設定が異様なくらい作りこまれています。読書の自由が政府によって侵害される中、図書館だけが読書の自由を国民に提供するために戦っている、という設定。非常に細やかに考えぬかれています。
また設定を表現するための角度が豊富で、政治的な背景、関係組織同士の政治やお金の動きを紹介し、ちゃんと「図書館戦争」の情勢を表現していました。その点に関しては素晴らしい。設定の細かいところにリアリティが全然ない上、設定を紹介するのに登場人物が長々と講釈を垂れる「虐殺器官」みたいな本と比較すれば、何とも自然に設定が理解できます。
しかし素晴らしい設定であれば尚更、テーマが何なのかが重要だと思います。つまり、設定に対して登場人物はどう感じているのか、賛成なのか反対なのか、それともどんな社会でも人間は生きていけるもんなのか、読者に何を考えさせたいのかというところです。その点に関して、この本は非常に弱いと思います。割と淡々としているんですよね。読書の自由を侵害する側と守る側が戦争をして、時には人が怪我したりして、ずるいことをされたりする、ちゃんちゃん。その設定における日常しか描いていない。
恐らくそれは、主人公の性格によるところが大きいと思います。主人公の郁は非常にラノベ的存在で、とにかく脳天気で無礼な女の子です。彼女は読書の自由を守ることに対して熱狂的なのですが、だからといって大々的に行動したり熱弁したりするわけでもなく、あくまで設定を楽しませるための装置としての存在でしかないのです。
設定の中で色んなことが起こって日常が流れて、しかも特に問題もなくてそれなりに上手く行っていて、主人公もそれなりに楽しくやっている時、その小説は設定を楽しむためだけの小説となります。つまり非常に夢小説的になると思うんです。これだけ設定が作りこまれているのに、郁と堂上教官の恋愛夢小説なんだよなあ!ほんとこれ謎なんですけど!残念でなりません!ワクワク度は、設定が吐瀉物のようだけど色んなことが起こった「プリンセス・トヨトミ」の方が高い。
シリーズが何冊もあるので、読み進めれば違った展開になるのかもしれません。堂上教官すっごい好き。犯したい。
The Beginners' Guide To The Ballet:バレエで玄人っぽく寝る方法
バレエ好きとして最も奥歯ギリィなのは、「バレエ初めて観たけど、寝ちゃって意味わからなかったわー」と誰かに言われる時です。寝るなら私にチケットくれよ。説教したい気分にすらなる。劇場で寝るなんて肛門も不用心ですよ。
しかし考えてみれば、バレエは人を選ぶ芸術です。
何しろ眠いですからね!いや、バレエが眠いのは気のせいではないし、観る側の経験値が足りないわけでもありません!本当に眠い!
バレエは極論を言えば、高価なチケットを買って、2.5時間くらい柔らかい(もしくは不運にも硬くて劣悪な)椅子に座り、退屈な音楽を聞かされて寝かしつけられた挙句、心に残ってるのは払ったお金の額だけ、という悲惨なエンターテイメントです。オシャレな拷問なのです。
しかし人間、気持ちいいことだけして生きていられるとは限りませんよね。時には、悦楽のために拷問に身を投じてしまうこともある。エレガントな異性に「良かったらバレエなんて行かない?色々教えてあげるよ」と囁かれたら、そりゃあね!待ち受ける物が拷問だって知っていても、飛んで火に入る夏の虫よね!
そういう時、折角チケット代奢ってもらったのに、隣でずーっと寝こけてたみたいなことになったら、余りにも無様じゃないですか。意味なんかわからんでもいい、楽しめなくてもいい、ただただ起きていたい!ただ目を開けていられさえすればいい、閉幕後のバーで相手にテキトーな感想を伝えられさえすれば!そんな切実な願いってあるでしょ。
まあそんなロマンチックな機会が一生に一回もない不運な人生だとしても、時にはロリータっぽいバレリーナの容姿に惹かれたり、「くるみ割り人形」の元ネタを教養のために観ておきたいと思い至ったりする気まぐれなこともあるでしょう。そんな時にもただ劇場で寝てるだけなんて、余りにもお金と時間が勿体無いではありませんか!
というわけで今回は、初めてバレエを観る方向けにどうすれば劇場で寝こけずに済むか、少しコツをまとめておきたいと思います。
目標はとにかくできるだけ起きているというただ1点のみで、意味を理解するとか楽しむとか、そういう高級なことは言いません
初めて行ったバレエでできるだけ起きている、そして玄人っぽく寝る方法を考えたいと思います。
コツ1、あきらめる
【読書1/5・第11回】△綿矢りさ「インストール」▼米澤穂信「氷菓」
どんどんいくよー
これは面白いですね!中国古典をモチーフにしたミステリー小説で、中国貴族の風俗が楽しめます。ミステリーファンでない人にはおすすめできます。
ミステリーファンが読むと、「このトリック何なんじゃオラ」って気持ちになるかもしれませんが、モチーフの良さでトントンくらいにならないかしら・・・。
私はミステリーファンではないので、もう少し風俗の描写を耽美的にしてほしかったなとちょっとだけ思います。少々事務的な印象を受けました。
梨木香歩の文章はなんて美しいのでしょうか。多分梨木香歩は詩を書いてもすごいはずです。話のプロットは、結構イカしたライフスタイルを持ったおばあちゃんと不登校の孫の交流物語です。ちょっとだけ、ちょっとだけなんですが、短いと感じました。児童書だったら多分もっと引き伸ばして、おばあさんからの学びをもっとわかりやすく書くんじゃないかと思います。この本は大人向けなので、その辺を引き伸ばさずばっさり終わることによって、余韻を出そうとしているのだと思いますが、私は物語が終わるのが名残惜しかったです。もっと浸っていたかったよう。家守綺譚のときはそうでもなかったんですが。そう思わせるくらいの魅力があるとも言えます。
・柴田よしき「RIKOー女神の永遠」
よくある男女共同参画社会@警察物です。「ストロベリーナイト」「凍える牙」と比較すると、この作品の主人公が最もリアルで、真実味があります。つまり、彼女は汚く、女々しく、ウジウジしており、何が一番大事なのか全くわかっていないということです。
余りにも現実っぽいので、逆に共感が難しい。彼女のように、本当に愛してくれている男を裏切って、自分を全く愛してくれないセフレを何人も作り、自分をレイプした相手ともセックスをして相手を屈服させるような女性、現実にいたら多分「自分で決めたことなんだから自分で責任取って強く進んでいけ」と思うし、文句を付ける筋合いもないでしょう。じゃあそれをフィクションでやったら、文句つけていい/つけないでいいのかって少々悩ましい小説です。主人公の素行が余りにも悪く、こちらを黙らせる力がある。主人公が余りにも間違っており、愛とは何かについて逆に考えさせてくるという点で、構造が「アヒルと鴨のコインロッカー」と似てます。結構胸糞です。
BEST1/5・綿矢りさ「インストール」
思いつきで手に取って読みました。今更感はありますが、高校生の時に読まなくてよかったと思いました。苦悩が重すぎて、当時読んだら嫌いになってたかもしれない。
「あっ、この人はマジで才能があるんだ・・・!」と思いました。こんなことを思うのは初めてです。小説を読んで、この人は文章力があるとか、描写がいいとか、設定がいいとか、そういう感想を持ったことはあります。しかし、「インストール」はそういう普遍的な感覚を超越しています。
文章力という言葉で表すのが憚られるような文章です。説明が上手いのではなく、リズム感が卓越しています。こんな句読点の使い方、体言止め、心情の入れ方、音楽的と言えばいいのでしょうか。圧倒的です。苦しいほど美しい。誰がこんな文章を書けるでしょう。設定は確かに平凡かもしれませんが、平凡な設定からこれだけの苦しみを書き起こしたのには驚きます。
彼女は他の誰にも真似ができない、輝くものを持っています。「インストール」には才能の輝きと共に、思春期の苦しみが編み込まれています。書くことの痛みがこちらにも伝わってきます。先輩作家が、文庫本の最後の解説で「苦しくてもあなたには才能があるから書かねばならない」と書いていました。本当にそう思います。
- 作者: 米澤穂信,上杉久代,清水厚
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2001/10/31
- メディア: 文庫
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これ登場人物を高校生じゃなく70代にして、古典部は老人会の古典サークルにしたら良い小説ですよ。元気な高齢者の小説は若者にも元気を与えますからね!
今まで何度か、高校生を描く小説における高校生らしさ・らしくなさについて、別の本のレビューで書いたことがあります。私はもう大人なので高校生は子供らしく描いてほしい方ですが、まだ私は若くもあるので、大人のノスタルジアを押し付けたような理想的な子供像にも反感を覚えます。そういう意味では、高校生を描いた小説にはかなりのリアルさ、自分の現実と近い雰囲気を求めていると思います。そうじゃないと感情移入できず、フィクションとして楽しむどころか、悪い意味での作り話にしか読めないのです。
【読書1/5・第10回】△三浦しをん「風が強く吹いている」▼乾くるみ「イニシエーション・ラブ」
これで50冊読みました。ここまででわかったことですが、私の好みは、個性的で語句不足な文体で詩人っぽく夢のように書いてくれる作家です。逆に一生懸命文字数費やして説明してくれる作家は酷評してしまいます。ツンデレですね。
なので私が酷評していても、余り気にしないでいただきたいです。誰でも文句言ってる時が一番瞳がキラキラしてるでしょう。
建築学科教授、プログラマーの天才、あと大学の新入生の天才という三人の天才が登場するのですが、誰一人として天才に思えません。この三人の天才は、どうしても人離れしてるように描かれるため、人間らしいところもなくなり、感情移入ができませんでした。なので物語の展開に対して、ふーん、としか反応できない。
ミステリーファンであれば、おそらく謎解きが気になって、トリックに感動して、という印象も持てたのだと思いますが、私はミステリーファンではありませんので、登場人物が好きでないといくら人が死んでも、ふーん、としか思えません。どうやら続編を読むと色々わかって面白いらしいのですが、私は読むことはないと思います。少々勝手な意見だとは思いますが、シリーズってかこつけて「本当の面白みや人物描写は次巻以降で!」っていう本はずるくないでしょうか。
全体の印象として、「勝手にFになれ」と思いました。
はぁーーーーーーー若い男の子!大好き!運動してる男の子!大好き!大好き!
この作品は目的のはっきりした小説です。叙述トリックのためだけに存在している小説です。叙述トリックを使う目的はありません。ただ使いたかったから使う、非常にあっさりした考え方です。
【読書1/5・第9回】△横山秀夫「クライマーズ・ハイ」▼リリー・フランキー「東京タワー」
久しぶりに迷わず褒めちぎりたいのと、迷わずこき下ろしたいのが5冊の中に入って幸せです。
・愛川晶「化身」
主人公が1歳の頃の記憶をめちゃくちゃ正確に記憶しています。才能でしょうか。
全体の流れは面白かったのですが、主人公が徐々に事件の重要事項を思い出していく系の小説は、どうしても読み手に騙された感を抱かせますね。
・吉本ばなな「キッチン」
正直またか、という感じ(デビュー作だけど)。
吉本ばななの小説は、精神不安定で他人に影響されやすい妄想癖がある女性が、年の割に上品で落ち着きすぎた天使みたいな個性のない男性と、好きなんだか好きじゃないんだかよくわからない雰囲気を醸し出し、最後まで読んでみて、あぁノロケだったの、と気付く、みたいなパターンが多くありませんか?
・楡周平「Cの福音」
90年代中盤に書かれた小説なので、パソコンに関する設定が異様に古いのですが、じゃあ内容も時代遅れなのかというとそうでもありません。
麻薬取引に関する小説自体、読んだことがなかったので、結構興味深く読みました。
ただ大きく盛り上がる系のアクション小説という感じではなく、かなり淡々と描かれています。言ってみれば麻薬取引日常系小説です。麻薬をドラマティックに盛り上げて書くのではなく、事実(虚構)を普通に描きたかったのかな、と思います。
久しぶりに見事な小説を読みました。読み始めたら止まらず、一晩で読みました。これは本当に素晴らしいエンターテインメントです。
日航123機墜落事故の時の新聞社が主な舞台です。これが非常に面白くて、とても勉強になりました。新聞がどうやって特ダネを載せるか、その葛藤みたいなものがとてもワクワクするように描かれていますし、そもそも日航123機墜落事故について詳しくもなれるという、神のような小説です。
また、報道倫理や命の扱いなど、メッセージ性の配分が心地よく、無駄に泣かせに来るわけではないのに、胸にちゃんとメッセージが残りました。泣け泣け言わないのに、ちゃんと深刻なんです。心地よい。
これは是非また読みたい小説です。今期最「他人に勧めたい小説」かもしれない。読んだことを自慢したい。
WORST1/5・リリー・フランキー「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜」
何故こんな小説を手に取ろうと思ったのか。今思えば血迷ってる。題名からして血迷ってる。
久しぶりにこんなにつまんない小説を読みました。
本の最初の方からお母さんが死ぬ話だってことはわかりきってるんですよ。そこから彼女が実際に死ぬまで490ページ。亡くなった時は「やっと!満を持して!」と思いました。素晴らしい話なのかもしれませんが、読み疲れました。490ページの間、ほぼ筆者がどれだけ仕事をしないでお母さんのお金で遊んで暮らしたか、みたいな話でした。アハイですよアハイ。寛容なお母さんでよかったねぇってな感じで。
まず小説の形式が非常に曖昧な感じです。私小説みたいな雰囲気を漂わせながら、突然現代を生きる筆者が、有名作家である自分の現在の価値観で若い女性に文句を言ったりするエッセイが挟み込まれるタイプの書物です。私はこの人に全く興味がないので、別にエッセイなんか読みたくなかった。面白くない通り越してウザかったですね。
爽快な嫌いさです。