【読書1/5第4回】△梨木香歩「家守綺譚」▼伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」
5冊読んではレビューするようにしたら、突然読書欲が際限なく湧いてきたから不思議なもんです。喋りたくて仕方ないのかもしれない。
・歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」
超面白かった。重要なファクターをわざと書かずに読者をだまくらかす系の書き方なのだが、余りにダイナミックに騙されたので、「ん?読み間違い?」と思い、次に「作者の書き間違い?」と思った。最初から読み直して確認してしまった。それぐらい騙された。登場する事件もとても異常でユニークでいい。年をとることが怖くなくなる小説。
一人称視点×ございますおります調で書かれていて、なんとなく女学生文学っぽく書きたいんだなということは伝わってくる。しかし細かい部分が似て非なるために、時代や主人公の家柄にしては稚拙すぎる感じになってしまっている。こうなると主人公も幼児に見える。
題材は日本の昔のスピリチュアルな慣習と超能力。心中を描きたい登場人物が多すぎて、結局中途半端になっている。あとは「自分でもなんだかよくわからないけど、こう聞いてしまう・こうしてしまう」というスピリチュアルな外部圧力が物語の進行を支えているので若干納得がいかない。
すごい、最初から最後まで何も起こらなかった。
BEST1/5・梨木香歩「家守綺譚」
非常に美しい小説です。
ある古い家を友達から借りて住んでる人の日常物語なのだが、世界観が唯一無二な感じです。木が人に懐いたり、家に河童が出たり、掛け軸の中の舟が床の間に乗り上げたりする。美しい夢を見るような読み応えです。
文体が厳しめなのが渋くて味わい深いです。これは欲しい。
短い話なので読みやすいです。
WORST1/5・伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」
近年稀に見る後味が悪い小説です。この小説が面白いと思える方は、ちょっと疲れているんじゃないでしょうか。世界は優しいところだと信じる、例え事実そうでなくても希望を持ち続けることが、回り回って周囲を幸せにしたりすることもあるんじゃないでしょうか。
脱線しましたが、この小説は、モラルの破綻と法律では裁けない罪がテーマ。何故「悪いこと」は「悪い」のか、激しく問うてくる小説です。モラルをテーマにした小説は色々あると思うけれど、主人公の考えを浅薄にすることで、読者を説教したい気分にさせるというのはなかなか新しいジャンルだなあと思います。
例えば「強盗はなぜ悪いか」と聞かれて、主人公は「法律で決まっているから」と答えたりする。「それは法律が間違ってる」と反論されると、たじろいだりする。それはさすがにないんじゃないの、と思う。内心説教しながら読み進めなければならなくて、疲れます。
主人公がこれだけ不甲斐ないのは、主人公が弁舌立つ人間だと困る人がいるからでしょう。作者とかね。それに付き合わされる読者。
登場人物がどいつもこいつも「相手の気持ちはわからないので推測する必要もない」と信じている人ばかりです。セルフで乳首の性感を開発する猛者がいれば、セルフで自分をサイコパスに調教する猛者もいるということなのか。
現実っぽいものの一番悲惨なところだけ書いて、その悲惨さから読者に強い正義感を引き起こしたいらしい小説ですが、私は正統派にドンパチやって「そげぶ!」って叫んでる方が好きです。しかも性格のいいイケメンが一人も出てこないとは!何なんだ!これ誰向けの小説なの!
全く全く全くこれっぽっちもオススメしません。