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なぜ彼女は処女膜で歌ったか

つまり、何故アシカは鹿ではないか

【読書1/5・第5回】△村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」▼伊藤計劃「虐殺器官」

今回の5冊は全て好きじゃないので、とても厳しい戦いでした。

 


道尾秀介「向日葵の咲かない夏」 

スーパーサイコパス小学生物語。死んだ人間が動物に生まれ変わるという設定がミステリーとしては特殊で、最後までこれが鍵を握っている。どんでん返しにビビる。しかし胸糞悪い小説でもあるので、二度と読み返したいものではない。

 

 

本多孝好「チェーンポイズン」 

登場する事件は一見とてもユニークで、あたかも普通の人物の絶望や暴走を描いているようなのに、結局一人の狂人の仕業というのが真相で、逆にがっかりするという不思議な展開。

 

 

京極夏彦姑獲鳥の夏

喋るパート長すぎで辛かった。最初の40ページはひたすら怪異とは何かを脳と心の関係からまとめた大演説。事件の種明かしには何と100ページかかった。とにかく話の脱線が多いのと、聞いてる人々がいちいち「そんなはずはない!」「そんなのひどい!」「そんなの失礼だ!」と合いの手を入れてくるからだ。

 

 

BEST1/5・村上春樹世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

  

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

 

この5冊はどれも好きじゃないので、これをBESTにするのは心苦しいが、仕方ない。

大いなる秘密を、その秘密の事情に最も詳しい人から聞くという目的のためだけに、地下の超危険な地帯を命懸けで旅をしてきた主人公のパートナーが、最初からその秘密を熟知していたけど、「言っても信用されないと思った」という高度に文学的な理由のためにずっと黙っていた点については、この際何も言うまい。何せこの小説、めっちゃおかしい(funny)。一応コメディーを意図して書かれたものではなく、人間の深層心理をテーマにした至極真面目な小説である。しかし笑える。

もう都市伝説化していることだけど、村上春樹の伝家の宝刀「やれやれ」が火を噴く。20回は出てくるんじゃないだろうか?こんだけやれやれされると、シリアスな場面でも笑えてくる。

また、主人公がとにかくおちんちんdrivenなのも最高に笑える。女を見るとまずセックスについて考える。ペニスについて想いを馳せる。登場する女の子は全員主人公と寝たがる。漫才である。

極め付けは、「僕のペニスが勃起しているのが感じられた。やれやれ、と僕は思った。」何と勃起からのやれやれ。「勃起やれやれ」型と呼ぶと便利ですので皆さんどうぞお使いくださいね。

登場人物のセリフがめちゃくちゃ不自然で、それもまた笑いを誘う。書き言葉に無理やり話し言葉の文末をつけているみたいなのだ。例えば、「メロスは激怒したの。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意したのよ。」とか、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意したの。」とかやってみると、すごい村上春樹風になる。

内容はさておき、ネタ性に富んだ小説でした。

 

 

WORST1/5・伊藤計劃虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

戦争の中で遺伝子と良心について考えるという忙しい小説。設定は面白い。戦争の中で良心はどこにあるのか、罪と罰はどこにあるのか、選択はどこにあるのか、というようなことを扱っている。言いたいことが多いようで登場人物が十行単位でよく喋る。

設定は面白いものの、全ての種明かしのはずのエピローグが短すぎるのが残念。虐殺文法とは何なのか、母の伝記の内容は何だったのか、主人公の行動の動機は何なのか、全てが曖昧で、具体的な情報がない。結局何の話だったのか、さっぱりわからない。突然主人公が抜け殻になって陰謀に暗躍すると言われても突拍子もない。長編小説にも関わらず、終わりだけショートショートというか、意味怖的な強引さがある。

また、文体が苦手だ。漢字読みがなカタカナという言葉がいっぱい出てくる。機関名やデバイス名なら許せもするが、アメリカ人の台詞の中に「いきまっせ(ヒア・ウィー・ゴー)」「捕まえた(ガッチャ)」「そ(ヤップ)」とか出てきて、クッソ痛々しい。そんなに英語使わせたかったら英語で書けばよかったのに。なーにがガッチャや。ガッチャってなんや。百歩譲って英語併記なら辻褄合うけど、ガッチャってそれ日本人の耳にしか通用せんやないか。主人公アメリカ人で一人称の小説書いてるのに耳だけ日本人の耳ってどないやねん。

wikiで知ったけどノイタミナでアニメ化するらしい。映像にした方がわかりやすい小説だと思うので、良かったと思う。そのときヤップはどうするんだろうwww