なぜ彼女は処女膜で歌ったか

つまり、何故アシカは鹿ではないか

【読書1/5・第6回】△隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」▼桂木希「終末のパラドックス」」

30冊も読みました!すごいね!
 
貴志祐介「青の炎」
普通の高校生が殺人を犯し、倫理が崩壊し、ずぶずぶはまっていく様を描いた作品。作者は犯人の視点から事件を描くのが好きなようだけど、この作品は「悪の教典」と比べると地味かなと思う。
 
佐々木譲「廃墟に乞う」
特に感想がない。鬱になって休職中の刑事が、周囲の人が持ち込んでくる事件を片手間に解決していくんだけど、その事件がどれも大きな謎があるわけでもなく、きちんと聞き込みすればわかっちゃう系のものばかりなので、地味。
 
庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」
文体に大きな特徴がある。高校生を描いた作品で、これほどリアルに忠実なのって今まで読んだことがない。もちろん高校生にしては異常に文学とかクラシック音楽に詳しいのが今っぽくはないなと思うけど、心の不安定さや幼いが故の苦悩は、まさに高校生そのもの。懐かしいような、可愛いような、微笑ましいような。
 
BEST1/5・隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」
死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)

死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)

 

 初めてのちゃんとした?歴史小説でした。歴史小説ってちょっとズルいかもしれないな。題材が面白すぎますよね。そもそも佐賀県って私の中では全く印象になかったので、新しい知識も得られて二重に楽しかったです。

徳川家光〜家綱くらいの時代の鍋島藩を舞台に、葉隠武士と呼ばれる戦士の中の戦士達を描いています。この小説は未完のまま作者が亡くなってしまって、結末がどうなるのかわかりません。それが本当に残念です。
歴史小説がめっちゃ面白いらしいことがわかったので、読み終わってすぐに吉川英治の「三国志」読み始めました。
 
WORST1/5・桂木希「終末のパラドックス
終末のパラドックス

終末のパラドックス

 

世界中に生物兵器が仕掛けられたグローバルなバイオテロを中心に、犯人、犯人の孫、各国の諜報機関、各国の政府首脳が入り乱れたドラマを繰り広げる、という話です。ややこし面白くなく、こんなにグローバルで派手な設定なのに、何故か退屈してしまった小説です。

まず、設定の細部にリアリティがなくて、余り感情移入できませんでした。「世界中にウィルスが蔓延していても、爆弾が爆発しなかった国(アメリカ)はウィルスに感染せず無事」という謎設定が、物語の1/4の進行を担っているのですが、普通に考えたらおかしいと思うのです。アメリカなんかメキシコと地続きなんですよ?しかも食料など物品を輸入したら締め出せるはずがないじゃないか。
それに、外務省の職員が、地球温暖化対策の基礎的な事項について国際経済学者に講釈を受けるのは公務員を舐めすぎだし、民間のシンクタンク文化人類学者が「飢餓や貧困や戦争がない人類社会は生物学的に不可能」ということを多くのデータを使用した(一体何のデータなのか)シミュレーションで表した論文が査読を通ってるのか何だか知らないが書かれてるのも違和感がある。国際問題とか大学教授とか出すのであれば、せめてそれっぽく見えるように書いてほしいなあってちょっと思いました。
登場人物が多く、1ページごとに出てくる人が変わります。3ページしか出てこない人もいるので、その人達の心境描写は上っ面になり、一体何のためにわざわざ出てきたのか、疑問に思ってしまいます。主観的な小説と、第三者的な映画とのいいとこ取り、といった雰囲気です。マンガでやった方が良かったのではないかと思います。
あとは、細かいことですが、色んな人の目や眼鏡が冷たく光りすぎではないでしょうか。一場面に一回は必ず出てくるといっても過言ではない。冷たく光らせすぎるのもアレではないでしょうか。
何だかよくわからない小説でした。