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The Beginners' Guide To The Ballet:バレエで玄人っぽく寝る方法

バレエ好きとして最も奥歯ギリィなのは、「バレエ初めて観たけど、寝ちゃって意味わからなかったわー」と誰かに言われる時です。寝るなら私にチケットくれよ。説教したい気分にすらなる。劇場で寝るなんて肛門も不用心ですよ。

 

しかし考えてみれば、バレエは人を選ぶ芸術です。

何しろ眠いですからね!いや、バレエが眠いのは気のせいではないし、観る側の経験値が足りないわけでもありません!本当に眠い!

バレエは極論を言えば、高価なチケットを買って、2.5時間くらい柔らかい(もしくは不運にも硬くて劣悪な)椅子に座り、退屈な音楽を聞かされて寝かしつけられた挙句、心に残ってるのは払ったお金の額だけ、という悲惨なエンターテイメントです。オシャレな拷問なのです。

しかし人間、気持ちいいことだけして生きていられるとは限りませんよね。時には、悦楽のために拷問に身を投じてしまうこともある。エレガントな異性に「良かったらバレエなんて行かない?色々教えてあげるよ」と囁かれたら、そりゃあね!待ち受ける物が拷問だって知っていても、飛んで火に入る夏の虫よね!

そういう時、折角チケット代奢ってもらったのに、隣でずーっと寝こけてたみたいなことになったら、余りにも無様じゃないですか。意味なんかわからんでもいい、楽しめなくてもいい、ただただ起きていたい!ただ目を開けていられさえすればいい、閉幕後のバーで相手にテキトーな感想を伝えられさえすれば!そんな切実な願いってあるでしょ。

まあそんなロマンチックな機会が一生に一回もない不運な人生だとしても、時にはロリータっぽいバレリーナの容姿に惹かれたり、「くるみ割り人形」の元ネタを教養のために観ておきたいと思い至ったりする気まぐれなこともあるでしょう。そんな時にもただ劇場で寝てるだけなんて、余りにもお金と時間が勿体無いではありませんか!

 

というわけで今回は、初めてバレエを観る方向けにどうすれば劇場で寝こけずに済むか、少しコツをまとめておきたいと思います。

目標はとにかくできるだけ起きているというただ1点のみで、意味を理解するとか楽しむとか、そういう高級なことは言いません

初めて行ったバレエでできるだけ起きている、そして玄人っぽく寝る方法を考えたいと思います。

 

コツ1、あきらめる

まず、バレエというものをちゃんと理解しましょう。バレエは死ぬほど面白いものではありません。どんなエキサイティングな場面でも、バレエは必ず少しだけ退屈なのです。
バレエファンの人々は、自分はバレエで起きていられるからって他人もちゃんと起きていられるはずだと考えていると思います。「バレエだってちゃんと筋を理解していれば面白い」と言ったりする。それは間違ってると私は思います。バレエは筋を理解していても必ず眠い。
現代社会には、バレエを凌駕するエンターテイメントがたくさんあります。ダンス・音楽・舞台芸術・肉体美を楽しみたいなら、シルク・ド・ソレイユでも行った方がずっとエンタメ性が高いのです。そもそもダンスなんか観たくない時も多いでしょ。アニメ観てた方が楽しい時だってある。
にも関わらずなぜ、バレエに行かねばならないのか。それはバレエ特有の眠さが好きだというキモチワルイ嗜好を満足させるために行くのです。その「バレエ特有の眠さ」というのは、バレエファンのボキャブラリーで言うと、「ロマンチックな雰囲気」だったり、「優美な体の動き」だったりするわけですが、そんなものは初心者の目から見ればただの「眠さ」「退屈さ」です。「ロマンチックな雰囲気」だと期待して行った初心者が寝て帰ってきて、「もうバレエなんか行くもんか」と思ってしまうなんて、悲劇以外の何物でもありません。
もう「バレエが眠くない」という欺瞞はやめて、過度に期待するのはやめましょう。バレエを初めて観に行く人は、バレエは必ず眠いものであると認識した上で、その眠さとはどんなものであるのかを探りに行く気持ちで臨むべきかと思います。「なぜ、バレエファンはこの眠さにハマってしまうのか」という謎を解き明かしに行く気持ちで劇場へ行きましょう。そして、退屈な場所を見切って上手に寝ようではありませんか。
初手、諦める。
 
コツ2、どんな素晴らしい作品にも必ず寝ていい場所がある
事前に寝溜めをしてきても、余りにも眠い時ってありますよね。バレエ作品の中には「寝てもあらすじ的に差し支えない場所」が設けられていることが多く、そういう時に狙って寝ることが可能です。
ただし、コツ2を解説する前にやっておくべきことがあります。もし自分で観る作品を選べるのであれば、とんでもなく眠い作品を観に行くのは避けるべきです。とんでもなく眠いものの見分け方は、大体以下の通りかと思います。
 
<とんでもなく眠い作品の見分け方>
・起承転結を伴う演劇仕立てではない
・コンテンポラリーというジャンルに属す
・あらすじが概念的/もしくはない
・登場人物が少ない/役名がない
・音楽が嫌い
 
こういったものは、初心者には必ず眠いです。こんなん私も寝ます。
逆に言うと初心者には、起承転結を伴う演劇仕立てで、あらすじがちゃんと物語として成立していて、ちゃんと役名がついた登場人物がたくさん出てくる、結構好きな曲調のクラシックバレエがおすすめです。作品選びだけでなかなか寝ずにいられます。
 
さて、どうしようもなく眠い作品に見に行かざるを得なかった/素晴らしい作品を選んだはずなのに眠い場合、いつ仮眠をとるかについてです。
 
あらすじがちゃんとある数幕で構成されたクラシックバレエ作品の場合、寝ていいタイミングがちゃんとあります。
 
<寝ていいタイミング>
・知らない人の結婚式/村のお祭りが始まった場合
クラシックバレエには、民族的な舞踊コーナーを作品の中に設ける謎の縛りがあることが多いのですが、無理矢理ねじ込んでいるのであらすじには無関係なことが多いです。知らない人がうじゃうじゃ意味の分からない踊りを踊りだした時、これは寝ていい合図です。変な花やリボンを持ってたらもう確定でしょう。

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写真は花で出来たリボンですから、W役満ですね。
くるみ割り人形のクリスマスパーティーなど、主人公の性格を表現する演技が含まれる時もあるので完全に不要とも言い切れないのですが、寝たからどうということもないと思います。
 
・知らない3人が踊り出した時

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写真のような、役名のない3人が踊るのを「パ・ドゥ・トロワ」と言います。こういう踊りは、結構上手な人が踊ることが多くて、ダンスが見たい人にとっては興味深いと思います。
しかし、パドゥトロワがあらすじに関係していたケースを見たことがない。100%寝ても差し支えありません。しばしば、結婚式や祭りシーンの中に含まれることがあります。グースカピー!
 
・同じ服を着た30名以上の人が踊りだした時
これはちょっと感覚的で見分け方が難しいかなと思うのですが、あらすじに関係することを30名余りの役名のない謎ダンサーと共に表現しなければならないシチュエーションは考えられません。物語に関係することは、役名のある人々しか踊らない/演技しない状態で表現するのが自然でしょう。つまり、30名余りの謎ダンサーが一斉に同じ踊りを始めた時、それはスリーピングタイムを意味するのです。

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この30名以上の謎ダンサーのことをコールドバレエと呼びます。群舞隊ですね。コールドバレエがひとしきり踊った後には、あらすじに動きがあることが多いと思いますので、踊りの最後には起きてください。
 
以上の3箇所が、玄人っぽい睡眠タイムです。寝る時間ですが、1コマ10分くらいで寝るイメージかなと思います。歌舞伎やオペラだとベラベラ喋るので5分くらいで物語が進みますが、バレエは意外と寝れます。作品によっては1幕全て寝ても差し支えない場合もあるのですが、観たことない作品でやるのはなかなかチャレンジングなので、とりあえず10分の 仮眠を取って、あらすじの展開に備えましょう!展開しなかったらまたお休みなさい!
 
ちなみにあらすじが余りにもぼんやりした作品を観に行ってしまった場合は、任意のタイミングで寝て下さい。寝ていても起きていても、存在しないあらすじの理解には影響ないですからね!
 
コツ3、困ったら手と足を見る
振付からあらすじを読み取ることができると、寝こけにくくなります。しかし、振付の9割には意味なんかありません。
中にはユニバーサルに意味が統一されている振り「マイム」というものがあり、これはどの作品でも同じ振りは同じ意味を示しています。バレエの中の手話みたいなものです。しかし、それを見たってあらすじがわからなくなることもあります。
わからなくなったらあきらめて、ダンサーの手と足を見ていましょう。ダンサーの上手さは、手の関節の柔らかさと足の強さで測られるそうです。そういうことについて想いを馳せましょう。あの人はあの人よりも手の関節が柔らかいから上手いのかなとか、あの人のつま先立ちはすごく安定しているとか、あの人のジャンプはあの人より高いぞとか、そういうことを考えましょう。
それも飽きたらお尻を見ましょう。ダンサーのお尻は、なかなか普通の生活でお目にかかれるお尻じゃないですし、目に焼き付けましょう。
 
 
この3つのコツで、2.5時間の舞台中、1時間くらいは起きていることが可能なのではないでしょうか。1時間起きていたら、あらすじはかなり理解できると思います。これで閉幕後、素敵な相手とバーでおしゃべりするくらいには起きていられますね!
さあ劇場で玄人っぽく寝よう!