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なぜ彼女は処女膜で歌ったか

つまり、何故アシカは鹿ではないか

【読書1/5・第15回】△遠藤周作「沈黙」▼辻村深月「ツナグ」

・小川糸「食堂かたつむり」

 柔らかな小説。
 小さな食堂にまつわる人間模様が、料理と共に描かれていく形式。こういう素朴で可愛い小説って時々読みたくなるんだけど、最近そういう「お料理で人生問題解決ふわふわ小説」がいっぱいあるので、新規性がない。

 

角田光代「八日目の蝉」

 誘拐犯の女と誘拐された女の子の間に生まれた母娘問題の話。母娘問題はさすが女性、経験があるのかとてもリアルに描かれていた。終わりはかなり呆気無くて、あんまり問題が解決したとは思えないし、ジャンプで言えば打ち切り感がなきにしもあらず。しかし、問題ってのは100%解決しなきゃいけないものでもないだろうし、100%解決しなきゃ納得できないものでもないと思うし、もしかしたら人は唐突に納得するものなのかもしれない。

 

窪美澄ふがいない僕は空を見た

 「沈黙」がなければ、この作品がBESTだったでしょう。あらすじは残念ながら全く思い出せないんだけど、人間の暗くて汚くて異常な部分を、ものすごく高い文章力で描き出してた感じでした。

 

BEST1/5・遠藤周作「沈黙」

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

  あらすじとしては、キリシタン狩りの最盛期に渡日してきた宣教師が拷問されて棄教を迫られる、という話。

 あらすじだけ聞くと和製「パッション」とまとめたくなるけど、天才が書くと”ものすごいもの”(語彙不足)になる。
 拷問されると宣教師も人間なのでやっぱり棄教を思い悩むんだけど、その悩み方の論理がすごくしっかりしていて、畳み掛けてくる。読者ごと追い詰めてくる。棄教か死を選ばされる。
 久しぶりに深く感動しました。感動の仕方としては、貴志祐介悪の教典」系。論理に感動する系。そういうのが好きな方におすすめです。

 また余談ですが、日本の小説によくある「クリスチャンだから良い人」とか「キリスト教の神は愛に溢れていて人を守ってくれる」とか、そういう偏見がありません。宗教小説ですが信仰がない人向けに書いてあるので、押し付けがましいところもなく、安心して読めます。キリスト教の概念は知っておいた方が楽しめそうかな・・・

 

WORST1/5・辻村深月「ツナグ」

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ (新潮文庫)

 

 これWORSTに選びながら言うのも何ですけど、結構オススメできます。ライトな現代ファンタジー読書家におすすめ。

 もはや使い古されてボロボロに擦り切れ異臭を放ち始めた設定である「イケメン死神が死を目前とした人のところへやってきて交流する」話の割に、よく出来ている。

 こういった「実は知る人ぞ知る心霊システムがあって、時々一般人の生活とも接触するんですよ」系小説では、ページ数なのか労力なのか知らないが、辻褄があわない詳細は「知る必要がない」とか何とか上手いこと言って省略する傾向にある。そう書きながら私は伊坂幸太郎を思い出してる。

 しかしこれは作者のセンスが一枚上で、「心霊システム下で働いているスタッフ自身も、心霊システムをちゃんと理解しているわけではないため、事情を100%説明することができない」という上手い設定を加えたおかげで、何もかも説明しなくても不自然ではありません。このため、読者に対して情報を故意に絞っている感じがありません。
 この作品はなかなかオススメできます。WORSTに選ばれてしまったのは、他の4冊が結構よかったのと、設定が個人的に好きじゃなかっただけの理由です。