なぜ彼女は処女膜で歌ったか

つまり、何故アシカは鹿ではないか

【読書1/5・第18回】△道尾秀介「月と蟹」▼京極夏彦「死ねばいいのに」

真梨幸子「アルテーミスの采配」

 AV業界というのは「沈められる」「落ちる」もので、「復讐の手段」であるという前提の上で、AV落としの都市伝説を膨らませて書いた、という感じ。都市伝説って大体面白いので、この小説も面白かった。でもAV女優が読んだら怒ると思う。

 

五十嵐貴久安政七年の大脱走」

 これを読む前に「利休をたずねよ」を読んで、台詞の無秩序にすごく腹が立っていたので、こちらは普通の歴史小説の台詞で安心した。
 突然、映画「大脱走」に突入してビビる。映画を見てからオマージュ作品として読むべき。題名と表紙以上にバカバカしい話だが、結構よくできていた。

 

松本清張ゼロの焦点

 突然疾走した夫を探して、妻が色々なところに聞きこみをしていたら、関係者が次から次へと殺されて、大変なことになる話(適当)。ちょっと世界が狭すぎて、限られた登場人物の中から無理矢理真犯人を絞り出している感じがする。でも文章は確かなので、読めてしまった。

 

BEST1/5・道尾秀介「月と蟹」

月と蟹

月と蟹

 

 うーん!これをBESTに選ばなきゃいけないのか!順番的に仕方ないか!

 ストレスが溜まりすぎた子供が、狂気を発症して幻覚を見たり、人を殺そうとしたり、我に返ってそれを止めようとしたりする話。その狂気を身体感覚でうまく説明したり、比喩や幻覚で意味付けしようとしたり、文章が上手です。

 私の好みにはちょっと暗すぎた。でもちゃんとしてました!ちゃんと面白かった!あとは好みの問題だと思います!

 

WORST1/5・京極夏彦「死ねばいいのに」 

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

 

  こういう小説ってほんとよくないと思うんですよ。京極夏彦みたいな著名な小説家が、こんな不用意な小説を発表していいのでしょうか。

 ある女性が死んだことについて、その女性に4回しか会ったことない謎男が、女性の関係者にインタビューして回る話です。で、その関係者が色々自分の置かれた環境に対して愚痴を言うのを聞いて、謎男が「死ねばいいのに」と言い放つ、という話。
 誰が喜ぶ本なのか。周囲の環境を受け入れられないけど受け入れる方法もその不満を解消する術もない、そのことに気付いてすらいない人々に対して、20代ぽっちの若者が「死ねばいいのに」と言い放っていく話を読んで、痛快とか、爽快とか、身をつまされるとか、そういう感じの小説なんでしょうか。良いじゃないの、問題抱えたまま不満なまま生きてたって。一々それを環境変えたり働きかけたりしなきゃいけないわけ?できる奴だけやっとけよ。これを読んで「本当その通り!私も頑張る!」みたいなことを思える人は非常に健康です。
 特に後半から説教じみてくる。大作家様の説教を聞く会。
 日本の小説って、虐待や犯罪にあっても「ひたむき」に「前向き」に生きてる人が普通で、PTSD人格障害を発症すると甘えだからって「改心」させられるじゃないですか。個人個人の痛みを比較して、「死んだあの子はもっと辛かったんだから、お前だって死ぬ気で頑張れよ」って説教することが普通にまかり通る。何で誰かと比較して叱咤激励されなければならないのか。この作者にメンタルの相談はしないことをお勧めします。

【読書1/5・第17回】△中島らも「今夜、すべてのバーで」▼「メインディッシュ」

沢木耕太郎「凍」

 実在の雪山登山家の壮絶な体験を小説化したもの。ノンフィクションだからなのかもしれないけど、インタビュー感というか、本人に対する遠慮みたいなものが若干残っている。ノンフィクションってこういうものなのかな。
 題材はすさまじい。登山の面白さが論理的に理解できる。現実に起こった話って思うから更に感動指数が上がっている気がして、若干ずるさを感じる。
 総合的に見て、かなり良い本の部類に入ると思う。

 

横山秀夫「ルパンの消息」

 最近、意外と警察官側からの犯罪解決小説って少ないかもしれない。犯人の心境に迫る小説が多いような気がする。これはスタンダードに警察が犯罪を解決する話。

 3億円事件とか、昭和の文化とか、読んでて勉強になった(こなみかん)

 

・荒木源「探検隊の栄光」

 テレビによるヤラセの探検隊っていうのはまあまあ面白いテーマだと思う。しかし文章力が微妙。心情描写がほぼ皆無なので共感とかがない。登場人物が8人?とか出てくるにも関わらず、それぞれの人間の設定を、テレビ局入社から描こうとする。読み切れない。

BEST1/5・中島らも「今夜、すべてのバーで」

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

 

 アルコール依存症の論理が見事に書ききられている。中島らも本人もアルコール依存症だったらしいので、「自分で自分の感覚を描いている」にすぎないんだけど、それにしても見事です。

 ストーリーは特にない。中島らも本人と思われる人が、アルコール依存症を悪化させ、入院し、自分の病状を色々考え、何とかお酒を飲めないか悪巧みし、別の患者と共謀したり、友達が死んだり、そういうパーソナルな話。

 患者は患者なりに自分の状態について分析していて、例えばこういう人はアル中になりやすいんだとか、こういう人は意外と大丈夫なんだとか、そういう分析が一々面白くて、ニコニコしながら読んでしまった。その上周りの人に「こんな本読みました!こう書いてありました!面白かったです!」と力説した。

 

WORST1/5・北森鴻「メイン・ディッシュ」

メイン・ディッシュ (集英社文庫)

メイン・ディッシュ (集英社文庫)

 

 うひゃひゃ!こういう系の話!こういう系の話が出てくるとすぐWORSTに飛び込んじゃう!

 主人公がものすごいウザい頭の悪い責任感のない都合のいい美少女で、ふわふわしててワケワカンねえイカニモ作者に創作されたような美青年が飯を作ることで、美少女の回りの人間関係の問題を解決する話。こういう話が世界で一番嫌い。

 美青年の方は薄ぼんやりした実像しかないから置いておくけど、美少女の方はさすがにキモい。周囲で起きる事柄に対して、心の中でツッコミすぎ。そのツッコミがまたお寒い。「化学構造式見ると気分が悪くなる」っていうのもキモい。読者に媚びてるのか何なのか。

 これが真面目な小説だと思うから腹が立つ。ライトノベルならあるある設定だし納得も行きます。

 「図書館戦争」の主人公が好きな人におすすめ。似てます。

【読書1/5・第16回】△多和田葉子「雪の練習生」▼柚木麻子「あまからカルテット」

樋口毅宏「日本のセックス」

 作者の努力、やりたいことは伝わった。性にまつわるトラブルを、性描写ありできちんと丁寧に描きたかったんだと思う。そして本当に、スワッピングの文化と、それに伴って個人が巻き込まれるドラマをちゃんと描いている。
 しかし文章力がないのが残念。視点変更がありすぎて、何が本当に起こっているのかがわかりにくい。1つの文の中で、主語は第三者からの観察なのに、述語が主観みたいなのが多発している。言葉の誤用も目立つ。
 また不必要にエリート批判を入れてくる。「日本のセックス」みたいに前衛的な題名の小説を書く人が、今更使い古された東大卒批判を入れてるのは陳腐すぎないかなあ。
 文章には問題があるけど、物語は面白い。「なんてこった!」「マジで!?」って言いながら読んだ。

 

野沢尚魔笛

 新興宗教によるテロを、担当刑事、担当刑事と獄中婚姻関係にある服役囚、また真犯人であるところの警察官の3人を通して解決していく話。
 真犯人の動機、担当刑事との獄中婚姻関係に至った理由が全くわからないが、テーマが割と面白い。映画化すれば動機とかは適当でいいので、映画化すればいいと思う。

 

・首藤瓜於「脳男」

 「脳男」って言うくらいだからサイコサスペンスなんだろうな!と思っちゃうけど、別に至って普通の警察物。犯人が少し頭いいくらい。

 

BEST1/5・多和田葉子「雪の練習生」

雪の練習生

雪の練習生

 

  人間社会で「普通にクマらしく」ホッキョクグマが生活する話(意味不明)。それも、人間社会にやってきたホッキョクグマが、色々ドタバタ冒険して人間と仲良くなりました系の話ではなく、人間社会で暮らしているクマが、日常生活の中で色々自分自身のことについて考えたり、今後のことに悩んだりするだけの話。ただそれだけの話。何も起こりません!

 人間社会にクマを登場させると、何となく冒険して人間と和解させなきゃいけないような気分になる(「クマのパディントン」病)けど、この作品はそうではない。

 これは超大作。分厚いという意味ではなく、感動の濃度がとても高い。作者の想像力、思考力の高さにびっくりした。

 人間以外の動物の哲学的思考を、人間的になりすぎず、非人間的にもなりすぎず、ギリギリのバランスと曖昧さで描いている。作者は、自分以外の感覚を想像し、説明するのが上手で、一つ一つ説得力がある。

 あまり共感ができない部分も多いが、人間の思考でない以上それが当たり前。敢えて伝え残すように書いている感じがする。

 全体的に野生動物の思考らしく取り留めがないのだが、決して散らかることがなく、丁寧。イメージとしては安部公房の「箱男」みたいな内向的な感覚。

 

WORST1/5・柚木麻子「あまからカルテット」

あまからカルテット (文春文庫)

あまからカルテット (文春文庫)

 

 特に何も起こらない。

 女性四人の仲良しグループが、最初から最後まで仲良しのまま仲良しという話。
 多分ストーリーが小説みたいに情報量が多い媒体に向いていない。マンガ向きだと思う。小説は文字数が多いから、それだけディープなところに踏み込むように期待してしまうけど、この作品ではライトな部分をジュニアノベルみたいにふわふわ紹介するだけ。
 だから別に嫌いじゃないけど全然おもしろくなかった。

【読書1/5・第15回】△遠藤周作「沈黙」▼辻村深月「ツナグ」

・小川糸「食堂かたつむり」

 柔らかな小説。
 小さな食堂にまつわる人間模様が、料理と共に描かれていく形式。こういう素朴で可愛い小説って時々読みたくなるんだけど、最近そういう「お料理で人生問題解決ふわふわ小説」がいっぱいあるので、新規性がない。

 

角田光代「八日目の蝉」

 誘拐犯の女と誘拐された女の子の間に生まれた母娘問題の話。母娘問題はさすが女性、経験があるのかとてもリアルに描かれていた。終わりはかなり呆気無くて、あんまり問題が解決したとは思えないし、ジャンプで言えば打ち切り感がなきにしもあらず。しかし、問題ってのは100%解決しなきゃいけないものでもないだろうし、100%解決しなきゃ納得できないものでもないと思うし、もしかしたら人は唐突に納得するものなのかもしれない。

 

窪美澄ふがいない僕は空を見た

 「沈黙」がなければ、この作品がBESTだったでしょう。あらすじは残念ながら全く思い出せないんだけど、人間の暗くて汚くて異常な部分を、ものすごく高い文章力で描き出してた感じでした。

 

BEST1/5・遠藤周作「沈黙」

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

  あらすじとしては、キリシタン狩りの最盛期に渡日してきた宣教師が拷問されて棄教を迫られる、という話。

 あらすじだけ聞くと和製「パッション」とまとめたくなるけど、天才が書くと”ものすごいもの”(語彙不足)になる。
 拷問されると宣教師も人間なのでやっぱり棄教を思い悩むんだけど、その悩み方の論理がすごくしっかりしていて、畳み掛けてくる。読者ごと追い詰めてくる。棄教か死を選ばされる。
 久しぶりに深く感動しました。感動の仕方としては、貴志祐介悪の教典」系。論理に感動する系。そういうのが好きな方におすすめです。

 また余談ですが、日本の小説によくある「クリスチャンだから良い人」とか「キリスト教の神は愛に溢れていて人を守ってくれる」とか、そういう偏見がありません。宗教小説ですが信仰がない人向けに書いてあるので、押し付けがましいところもなく、安心して読めます。キリスト教の概念は知っておいた方が楽しめそうかな・・・

 

WORST1/5・辻村深月「ツナグ」

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ (新潮文庫)

 

 これWORSTに選びながら言うのも何ですけど、結構オススメできます。ライトな現代ファンタジー読書家におすすめ。

 もはや使い古されてボロボロに擦り切れ異臭を放ち始めた設定である「イケメン死神が死を目前とした人のところへやってきて交流する」話の割に、よく出来ている。

 こういった「実は知る人ぞ知る心霊システムがあって、時々一般人の生活とも接触するんですよ」系小説では、ページ数なのか労力なのか知らないが、辻褄があわない詳細は「知る必要がない」とか何とか上手いこと言って省略する傾向にある。そう書きながら私は伊坂幸太郎を思い出してる。

 しかしこれは作者のセンスが一枚上で、「心霊システム下で働いているスタッフ自身も、心霊システムをちゃんと理解しているわけではないため、事情を100%説明することができない」という上手い設定を加えたおかげで、何もかも説明しなくても不自然ではありません。このため、読者に対して情報を故意に絞っている感じがありません。
 この作品はなかなかオススメできます。WORSTに選ばれてしまったのは、他の4冊が結構よかったのと、設定が個人的に好きじゃなかっただけの理由です。

【読書1/5・第14回】△乙一「暗いところで待ち合わせ」▼浅田次郎「王妃の館」

 半年間に読んだ本シリーズ第二弾。相変わらずぼんやりしたレビューです。

 今回の五冊はどれもよかったです。

 

有栖川有栖「双頭の悪魔」

 普通の推理小説なのですが、章の途中で「読者への挑戦コーナー」が設けられており、「ここまでの小説を読んだ中で、あれこれの謎を解け」と問題が出題される面白い構成です。恐らくサスペンスファンの方は、問題出題されるまでもなく、自分で色々考えて推理しながら読むのでしょうが、私は推理しながら読む方ではなかったので、結構新鮮でした。
 芸術家たちが隠れ住む村ということで、登場人物がオシャレ感満載。香水を調合する人が登場する小説とか読んだことなかったです。

 

東野圭吾「秘密」

 事故の拍子に誰かと誰かの精神が入れ替わってしまう設定とか、結末の設定とか、どことなく既読感は漂っています。しかしさすが東野圭吾。心情表現が細やかで、そういった既読感の中でも退屈させない質に仕上げてきます。既存の設定の使い回しではなく、よく知られた設定に対する優等生による解答といった感じ。
 人生の不思議なめぐり合わせに翻弄される二人の孤立感がとても悲しく、泣きました。

 

三浦しをん舟を編む

 「風が強く吹いている」と同じく、スポ根的青春ご都合展開。周囲の環境に大変恵まれた主人公が才能を活かしてちゃんと成功する。
 題材が辞書編纂ということで珍しいし、辞書編纂の時のジレンマみたいなものが三浦しをんらしい明るさ(浅さ)で扱われている。
 実態はもっと苦しいに違いないが、エンタメなんだからいいじゃないか!という本。私はこういうの好きです!
 まあまあオススメですが、買うほどではないかな?図書館へGO!

 

BEST1/5・乙一「暗いところで待ち合わせ」

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

 

 聴覚障害と犯罪をテーマにした小説ですが、結構癒し系です。聴覚障害の女の家に、犯罪の容疑者として追われる男が隠れて生活する話。手探りで人間同士が繋がっていく様子がとても心地よくて、オシャレな小説です。

 

WORST1/5・浅田次郎「王妃の館」

王妃の館〈上〉 (集英社文庫)

王妃の館〈上〉 (集英社文庫)

 

 読みやすいように、そこかしこに下ネタやギャグが散りばめられているのですが、残念ながらそういうネタには流行がありますよね。既にお寒い感じになっちゃっています。
ストーリーはかなり真面目なもので、フランスの歴史をきちんと扱おうという姿勢が見えます。しかし大衆が読みやすいように気を使いすぎて、古くなってしまった感がありました。

 このレビューで伝わるかと思いますが、WORSTというほど悪い小説では決してなく、結構面白いし、よく練られています。

 

【読書1/5・第13回】△中島らも「ガダラの豚」▼夢枕獏「陰陽師」

 ここ半年くらいずっと読書1/5を放置していたのですが、ちゃんと読んではいたんですよ!レビューするのがめんどくさかっただけです!

 でもよく考えてみたんですが、やっぱり読書はブログで整理した方がいいっぽい。紙でやってもブクログでやってもあんまり達成感なかったんですよ。読書1/5と同じことを映画でも舞台でもやろうと思ってます。

 さて久しぶりに書きます。もう半年前に読んだ本なので、記憶がほぼありません。だからぼんやりしたレビューします!

 ここに挙げた五冊ですが、「東京島」と「ガダラの豚」以外の三冊はどれも好きじゃなかったので、WORSTは入れ替え可能な雰囲気です。

 

伊坂幸太郎空中ブランコ

 イップスを始め、精神的に参ってしまった人々が訪れる心療内科の話。解決策が余りにもライトすぎて、ついていけなかった。これは今この瞬間参ってる人が読んだらイラつくかもしれない。特に主人公の精神科医がバカバカしくて邪魔。

 

桐野夏生東京島

 桐野夏生は不快な情景を描くのが上手すぎる。人間の汚さと愚かさが凝縮された小説でした。
 (ほぼ)無人島という話の種が少ない中ですが、そういった人間の心の色々を描きまくることによって、退屈しない(不快でないとは言っていない)。
余りにも不快なので二度と読みたくないですが、素晴らしい作品であることは確かです。

 

伊坂幸太郎「死神の精度」

 あぁぁっ!そうですよね!伊坂幸太郎ってこういうことするんですよ!っていう読後感。
 伊坂幸太郎は、細かいところの設定がガバガバなんだけど、「僕はここでは全部は話しませんけど、大体こんな雰囲気の事情です、君たちはこれだけ知ってれば十分ですから安心して下さい」という感じに仕立ててくることがあるじゃないですか。この小説もまさにそんな感じです。
 非常にうまく機能している(という設定の)死神システム下で勤務している死神が、様々な生者に会って、ブラックボックスの判断基準によって生死を決定していく話です。読者に与えられる情報が絞られているので、頭を使う余地とかはないです。
 シチュエーションを楽しむ小説。

 

BEST1/5・中島らもガダラの豚

中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)

中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)

 

 「呪術vs科学」がテーマの大冒険物で、「呪術は本当にあるのか?呪術は科学的に解明できるのか?」という疑問をこねくり回すストーリー。
結構驚きだったのが、科学側の視点がかなり科学的だったことです。論理構成がきちんとしてました。当たり前っちゃ当たり前なんだけど、変な小説もたくさんあるでしょ。この作品はちゃんと感情移入ができたし、ワクワクしました。
 また、その「呪術はマジであるのか問題」に対してこの小説が出した結末が「何かよくわかんない!」であるところがとてもいい。読者にその辺は丸投げ。丸投げしたことによって、オカルト信者もアンチオカルトも、ちゃんと結末について頭を使える仕組みになっています。
 科学、心情、冒険、ケニアの自然と文化、オカルト、殺人と盛りだくさんでバランスが良い小説です。これが1996年に書かれた小説とは!とてもオシャレです。

 

WORST1/5・夢枕獏陰陽師

陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫)

陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫)

 

  ストーリーはあるようでない感じで、量産型のアニメみたいな感じ。安倍晴明が解決する事件がしょぼすぎるし、解決方法も鮮やかでもなんでもない。
 文体については、短文で畳み掛ける感じにしたい文体なんだと思うのですが、改行があまりにも多くて、ぶつ切りっぽい雰囲気が半端なかったです。個人の好みなのでどうだって良いのですが、私には合わなかったです。痛い。
 平凡です。

 

 

 

布ナプキンは肌触り最高!あと人の生き方と価値観の根幹を問うてくる哲学的物体!

半年以上ぶりにブログを開いたのにアクセスカウンターがぶん回っていました。みなさんありがとう。

お久しぶりということで、折角ですが本日の話題は”””””生理用ナプキン(布)”””””

経血まみれでごめんね!

 

最近布ナプキンを使い始めまして、使用生活が安定してまいりましたので、みなさんにおすすめしたいと思います。

しかし生理用ナプキン(紙)の使い方すら定かでない男性諸君にとって、

布ナプキンはほんとに宇宙的な事物だと思う。(食事の時使う便利な布ではない)

 

まずご説明しましょう。

これがCM等でよく見かける紙ナプキンですよね。 

エリス ウルトラガード 朝まで超安心 パーフェクトブロック 400 (特に心配な夜用) 羽つき 12枚

エリス ウルトラガード 朝まで超安心 パーフェクトブロック 400 (特に心配な夜用) 羽つき 12枚

 

蛇足だが、私の経血量だと40cm長のナプキンだと絶対に漏れることがない。

というか35cm長でも漏れないからかなりオーバースペックだな。

  

これに対して布ナプキンはこれ。

意味わかるかな?構造は紙ナプキンと一緒なんだけど、材質が布なんです。

つまり紙のおしめと、布のおしめの違いなの。紙のおしめは使ったら捨てるけど、布のおしめは使ったら洗ってまた使うわけなの。

 

簡単にまとめると、以下の違いがあります。

◯紙ナプキン

K-1. 使い捨てできる≒消耗品だからトイレットペーパーみたいに欲しいときになくなってるみたいな事態がある

K-2. 圧倒的吸収力に裏打ちされた鉄壁の信頼感

K-3. 材質の宿命として、とんでもなく蒸れる、しばしばかぶれる、経血の終着点が微妙にベチャっとする(よね?)

K-4. トイレでガサガサうるせえんだよ!

K-5. 気楽

 

布ナプキン

N-1. お尻が天国の肌触り

N-2. トイレでガサガサうるさくない

N-3. 何せ布なので、吸収力はそんなに信用できない

N-4. 洗濯メンテナンスがめんどくさいと思えばいくらでもめんどくさい

N-5. 何度も使用した布ナプキンがほんとに清潔かって聞かれるとかなりあやふや

N-6. なんかしらんけど値段が高い

N-7. 体型に応じて布の量を工夫できて興味深い

 

布ナプキンを使用するにあたって一番のメリットはN-1で、一番のデメリットはN-4でしょう。これを天秤にかけて、実際どうなのっていうのが、みなさんの興味あるとこではないでしょうか。

個人的な経験では、メンテナンスのめんどくささを耐えて余りあるほど、お尻が天国の心地よさです。

 

◯N-1. お尻の感触について

布ナプキン、本当に本当に本当に気持ちがいいんです。

個人的に一番助かったのは、尻たぶと尻たぶの間にかいた汗が不快じゃなくなったこと。通気性がいいから余り汗をかかなくなったし、布だから汗を吸収してくれる。

かぶれとは無縁だし、常にナプキンの表面がサラサラな状態に保たれてるし、加えて布製だからあたたかい。

別に紙ナプキンにすごい不満だったわけじゃないけど、布ナプキンは文明開化だった。自分が当たり前に過ごしてた現実の意味が変わっちゃったよね。よねって言われても困ると思うけどね。

布ナプキン推進してる方々がよく「紙ナプキンは化学物質が体に悪いけど布ナプキンは安全」とか言ってるけど、そんな宗教は知ったこっちゃないんだよ。大陰唇の感覚だけで充分布ナプキンは雄弁ですよ。布ナプキンの良さは大陰唇に語らせろ。

 

◯N-4. メンテナンスについて

紙ナプキンなんか買って捨てるだけだったのに、布ナプキンはそうは行かないのが本当に残念だ。

でも思ってたより何もしなくていいんですよ!パンツに経血つけちゃった時に1人でシコシコ浴室で洗う大変さみたいなの想像してるでしょ?そんなに大変じゃないの。

「セスキソーダ」とかいうとんでもねえ薬品が売ってるの。朝、水溶液を洗面器に入れて布ナプキン放り込んでおいて、夜お風呂入る時に取り出して水で流して、洗濯機に放り込むだけ。これでキレイ。セスキソーダが血液を溶かし出してくれるから、手洗いほとんど必要なし!

この方法だと、浴室で素っ裸で血が溶けた水を扱う女が観測されてしまうね。家族がいる方は現代芸術的なことにならないように洗濯方法を考えた方がいいかと思います。

あとN-5に書いたように、この洗濯方法が本当に清潔かと聞かれるとあやふやです。ちゃんと菌落ちてるのかみたいな懸念は確かにある。でも人間あんまり死ななくない!?洗ってないパンツ履いてて人間死ぬことある!?わかんないけどあんまり死んだの聞いたことない!!どう!?

布ナプキンは個人の衛生と穢れの価値観を問いただしてくる。どこから自分は穢れだと思うのか。穢れより何を優先するのか。結局どのへんまで穢れを許容できるのか。最初から最後までその水準をキープするのか。それともなあなあになるのか。

 

◯N-7. 使い方のアイディア

もう1つ、すげー興味深いなって思うのが、N-7の体型に応じて布の量を工夫できるところ。

例えばゴロゴロしまくりの休日とかって、普通の昼用紙ナプキンだと後ろが足りなかったりするでしょ。そういう時は布ナプキンを足りないところに足せばいいんですよ。

多い日の昼用を使ってる日に、軽い日の昼用を使うことができる、これが布ナプキンアウフヘーベン

夜も同じで、35cmの夜用紙ナプキンを使う日に、30cmの夜用紙ナプキンと布ナプキンを併用すると、快適さが段違い。

紙ナプキンと併用する使い方だと、布ナプキンは高価すぎて参入しかねる人も試しやすいと思います。百均にいってタオルハンカチ買ってきて、お尻の気になるところに敷くだけだからね!寝るときはタオルハンカチよりも小さくて長いタイプのタオルが伝い漏れに鉄壁の防御力です。

紙ナプキンを使わず、布ナプキンのみで貫く使い方もなかなか面白くて、上にセットする替えのパッドを交換できるタイプの布ナプキンが売ってます。そうすると、肌に触れる素材をワッフルにするのか、綿なのか、ウールみたいなやつにするのか、厚さはどうするのか、みたいにこだわれるわけです。ちなみに私はこだわりはありませんね!そんなめんどくさいことどうでもいいね!好きにしてほしい!あと布ナプキンの購入者レビューで「柄がかわいくて元気がでる」とか言ってる人もよくいるけど、好きにしてほしい!!!!

ただし、材質が布なので、経血量の多い少ないには余り上手に対応できません。少ないときは別に快適だからいいけど、多い時は思ったよりすぐ漏れる可能性があります。経血が布に触れると横に広がらずに縦に貫通しちゃうんですね。吸収体入りのものを買った方がいいですよー。

とにかくね、単純に便利なんですよ。市販の紙ナプキンは個々の事情に対応しようとすると何種類も持ってなきゃいけなくて、結局あまりうまくいかなかったりするけど、布ナプキンはタオル一枚持ってりゃ色々できて簡単なんだよね。

布ナプキンを使う前は、そもそも「経血」と「イノベーション」という言葉を結びつけて考えること自体がなかった。その点で布ナプキンは私に知的革命を起こした。

 

 

あっ以上です。

言いたかったのはですね、布ナプキンは自分でメンテ(自由形)をし、自分で自分に合わせて自由にカスタマイズして、その上で好きな分量の快適さを享受できるという、人生みたいな?女性の社会進出みたいな?マインクラフトみたいな?牧場物語みたいな?そんな物体だということです。それだけです。